スマートって何だろう
ある日の通勤時間帯のこと。
首都圏の中でもマイナーな部類に属する路線に乗り入れる私の最寄駅は
各駅停車しか停まらず、普段からさほど混むことはない。従って改札の流れも比較的穏やかである。
しかしそんな改札を、私の前を歩く一人の女性が少し奇妙な動きで通っていた。
体勢を見たまま、とてもわかりづらい例えをすると
ギリシャ文字のλを逆にした感じである。
私は初め何が起きたのかと考えたが、すぐにその疑問は解決した。
そう、スマートウォッチで通っていたのである。
そしてなぜ少し奇妙だったのかと言えば、左腕に着けていたからであった。
某林檎社の製品であろうそのスマートウォッチは、多機能かつデザインも洗練されていて
現代技術が織りなすスマートさの象徴であるように思える。
その女性のことは何一つ知らないけれど、勤め先ではバリバリのキャリアウーマンで
とてもスマートウォッチの似合う人なのかもしれない。
しかしながらオフィスカジュアルに身を包んだ、その女性が取った動きはとても不恰好で
スマートさとはかけ離れていた。
現代であれば誰でも持っているスマートフォンに代表されるように
私たちの周りにはスマートデバイスが溢れている。
そのスマートデバイスによって生み出された"非スマートさ"に
得も言われぬ面白さを感じながら私は電車に乗ったのだった。